「共感して、寄り添う」

整体法講座のある門下生が、目覚ましい症例を報告してくれました。

「掌蹠膿疱症性関節炎」という、慢性難治性の疾患があります。
この診断名をつけられ、病院で治療を受けるも全く改善の兆しが見られず、長年、全身の耐え難い痛みで苦しみ続けて来られた方の症状が、軽減されたそうです。

それまで足を引きずって歩いていたのが、普通の歩行が可能になってきたとのことです。
どうしたらよいのか途方に暮れ、絶望していたのに、希望が見えてきたと喜ばれたそうです。

この門下生は、2月に受講を開始したばかりです。
もっとも基本的な手技を、一通りカタチだけできるようになったに過ぎません。
それなのに、なぜこのようなすごい症例が出せたのでしょうか。

この門下生は、その方に身体に触れた瞬間、あまりの硬さに驚き、「どんなにつらいだろう、どんなに苦しいだろう」と感じたそうです。
まったく未熟ではあるが、自分が身に付けた技術が、わずかでも役に立てばとの一心で、施術をしたそうです。

真に人を癒すのは、技術の巧拙ではない。
それが、如実に顕われた症例ではないかと思います。

人は生きている以上、問題にぶち当たり、苦しみ、悩むものだと思います。
身体の痛みや病気も、そのひとつです。
しかし、苦境に陥った時、他者に出来ることは、解決策や答を与えることではないと私は思います。

真の答は、本人にしか出せないものだと思うからです。
他者が出来る最大のことは、共感し、寄り添うことではないかと思います。
身体の痛みや病気も、同じではないでしょうか。

苦しんでいる人、困っている人が目の前にいれば、助けたくなる、何とかしてあげたくなるのが、人として当たり前の感情だと思います。
だから、アドバイスをしたり、意見を述べたり、手伝いたくなります。

しかし、度が過ぎると“エゴ”になります。
「あなたのためを思って」と言われた言葉で深く傷ついたり、余計に落ち込むことは、よくあることです。

整体師であれば、相手に治って欲しいと願うのは当たり前ですが、その気持ちが過ぎると「自分が治してやる」「役に立つ自分でありたい」というエゴになりかねません。
結果的に治癒を遅らせることになることもあるので、十分に注意が必要です。

共感して、寄り添う。
相手の心の声を聴き、自分の最善を尽くす。
すべてに、真心を込める。

それが、最高の整体法ではないでしょうか。

いのちとは、儚いものでもありますが、限りなく力強いものでもあります。
私自身、整体の現場で、日々それを実感しておりますが、まだまだ探求の緒についたばかりです。
本症例は、そんな私に新たな気付きと、大いなる学びを与えてくれました。

この門下生に心よりの感謝をいたすとともに、今後も見守り、共に学んで参りたいと思います。
ありがとうございます。

共感し、寄り添う